アンコウの身に覚えなき吊るし切り    野田 冷峰

アンコウの身に覚えなき吊るし切り    野田 冷峰 『合評会から』(番町喜楽会) 可升 一種の擬人法だけれど、嫌味がない。吊るされて捌かれて、何でこんな目に遭わなくてはならないのか、という鮟鱇の嘆きが聞こえてきます。 春陽子 そうだよね、鮟鱇にしてみれば身に覚えのないことですよ。 大虫 マグロでも半身にされちゃうけれど、何しろ吊るし切りですからね。 正裕 悪いことしたわけじゃないのに、これほど残酷な仕打ちを受けるとは。 百子 鮟鱇は捨てるところがない、と言うでしょう。骨の筋まで剥ぎ取られるのですよ。 冷峰(作者) 私も昔は身に覚えのないことで、よく・・・  誰か 吊し上げられたか。         *         *  魚料理店で砕氷に埋もれた巨大な鮟鱇を見た。氷の中から出ている顔は人間の倍ほど。怪獣、いや悪魔と言うべき風貌であった。しかし人間はこれをバラして食ってしまうのだ。鮟鱇から見れば人間こそ悪魔である。(恂)

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