鴨泳ぐずっと前から居る顔で    大澤 水牛

鴨泳ぐずっと前から居る顔で      大澤 水牛 『季のことば』  東京近辺の池や河川にはすでにカモ類が飛来してきた。かつてはドブ川と呼ばれたような川も近年は水がきれいになり、マガモ、コガモ(種類の名)などが姿を見せている。散歩中の高齢者や買い物途中の奥さんらが立ち止まって、眺めており、わが家のカミさんも「今日は十羽くらい」などと報告する。  すると、渡りをせずに居ついていたカルガモが逆に姿を見せなくなった。彼らはロシアあたりからカモがやって来ると、遠来の客に場所を譲るようにどこかに行ってしまうのだ。今では新顔のカモたちはまるで自宅に戻ったかのような態度で悠然と泳ぎ、川の中に首を入れ、何かを食べたりしている。  句の「ずっと前から居る顔で」を見て「そう、そう」と笑ってしまった。このところ小さなコガモなどがわがもの顔でのさばっている。こうなるとカルガモたちのことが気にならざるを得ない。作者は横浜の三渓園あたりで、水鳥をよく観察しているという。今度会った時にカルガモの消息を聞いてみよう。(恂)

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