秋の陽と雲切り取りし水たまり 深瀬 久敬
『おかめはちもく』
秋の陽と雲切り取りし水たまり 深瀬 久敬
三四郎句会の十一月例会合評会ではこの句について以下のようなやり取りがあったという。
有弘 絵画的というか、レンズの目で詠んだ句ですね。
照芳 水たまりに秋の雲。本当かなと思う部分もあるが、上手い表現。
雅博 「切り取る」がいいですね。
賢一 水たまりの中に空を切り取るという、このセンスにあやかりたい。
尚弘 水たまりの様子をうまく詠んでいる。観察眼が生きています。
而云 水たまりに陽が映るとまぶしそうだ。「秋空の」の方がいいかな。
* * *
晩秋の雨上がり。身も心も晴れ晴れするような景色をすっと詠んだ、気持の良い句である。ただ、月と違って太陽はきらきら反射するばかりで、水面には映らないのではないか。映っているのは秋空をバックにした白雲であろう。俳句は理屈通りに詠む必要はないのだが、やはり理に叶うように詠んだ方が読者の胸に素直に入る。私もここは而云氏に同感。
(添削例) 秋空の雲切り取りし水たまり (水)