納豆を分けて施設の老夫婦     深田 森太郎

納豆を分けて施設の老夫婦     深田 森太郎 『この一句』  揃って健康で八〇歳を超える夫婦が珍しくない昨今、老夫婦の暮らし方にも変化が現れている。長く住んできた家はすっかり古くなり、修繕の手間と費用ばかりかかるようになった。息子娘は既にそれぞれの家庭を築いている。ということで、それを売り払い、売却代金で有料老人ホームの夫婦二人部屋に入る人が多くなったという。高齢者用マンションというのもある。これもいざという時の看護師や食事サービス付きというのもある。  この句の老夫婦もそういった施設に入居しているのだろう。それなりにまとまった入居一時金を払えば、毎月の入居費は年金でまかなえるし、私用の金は貯金の切り崩しで死ぬまでなんとかなりそうだ。かなり手狭ではあるが、三食付きで、ヘルパーさんや医師の定期検診などもあって安心だ。  ただ、お仕着せの食事に飽きが来るのが問題。そこで時々は散歩がてら買って来るものを食べる。久しぶりに納豆御飯もいいね、ということで買って来た。けれど他のおかずもあるし、半分ずつ分けましょうかと。老夫婦の小春の朝餉、現代の偕老同穴風景をさりげなく描き出した。(水)

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