冬めいておのれ一人の長い影     池内 健治

冬めいておのれ一人の長い影     池内 健治 『この一句』  芭蕉に「此道や行く人なしに秋の暮」という有名な句がある。元禄7年9月26日、愛弟子去来の弟子泥足の句集の巻頭を飾るため、半歌仙の発句として詠まれた。既にこのこの頃の芭蕉はこじらせた風邪に悩みながら、無理をして連日、俳席をこなしていた。  体調悪く、気分も優れず、思い悩むこともいろいろあったのだろう。「もう冬の入口のような秋の暮、人っ子一人いない道をとぼとぼ歩んでいます」という淋しさ極まる句である。そして、この句には「所思」という前書が付いているから、通り一遍の叙景句ではあるまい。関西地方の蕉門は仲間割れしたり、芭蕉の説く「かるみ」を理解しない弟子達が多い。それでこうして病身に鞭打って出かけて来た。連れだって歩く人(理解者)の居ない寂寥感が裏打ちされているようだ。  さて、掲出句はどうであろうか。芭蕉句ほど深刻ではないが、そんな雰囲気がそこはかとなく漂ってくる。急に寒さを感じるようになった夕暮れの一本道。自分の影だけがいやに長く伸びている。心細さと焦燥感が募ってくる。(水)

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