朴葉味噌灼けるの待ちて新酒酌む     野田 冷峰

『おかめはちもく』  朴葉味噌焼くるを待てず新酒酌む (添削例)  朴葉味噌は元々は飛騨高山の郷土料理だったが、今では全国各地の山間の温泉宿で供される。掌の二倍もの朴の葉に盛った味噌が炙られ、香ばしい匂いを立てる。これが実に旨い。  大昔の飛騨の冬場はおかずと言えば野菜の古漬けと味噌しか無かった。古漬けを刻み、味噌と混ぜて朴葉に塗り、囲炉裏の火で炙って御飯に乗せて食べたのだ。今の朴葉味噌は豪華そのもの。茸や山菜に飛騨牛が載っているものがある。場所によっては山菜と共に岩魚が焼かれていたりする。  この句の朴葉味噌は何処だろうか。もしかしたら都会の料理屋なのかもしれない。洒落た一人前のコンロに金網が敷かれ、その上に朴葉味噌。「ふつふつとしてきたら召し上がれますよ」と仲居が火をつけてくれる。ほのかに湯気が立ち、香りが立ってくるがなかなかふつふつとはならない。「ええい、ままよ」と、まずは新酒で乾杯、そんな感じがする。  というわけで、「灼けるの待ちて」はいかにもまだるっこい。呑兵衛の気持を思いやれば、やはり「焼くるを待てず」ではないだろうか。(水)

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