深煎りの珈琲の香や土用東風     和泉田 守

深煎りの珈琲の香や土用東風     和泉田 守 『季のことば』  句会合評会で「こんな暑い時に飲むコーヒーだと、やはり香りも味も濃い深煎りがいいのかな、土用に合っているな」(弥生)という感想があったが、この評に尽きると思った。  梅雨が明けて本格的な夏となった頃、本州は広く太平洋高気圧に覆われて、一片の雲も無く青青と晴れ上がり、太陽が容赦なく照りつける。そんな中を吹き抜けるかなり強い東風である。それ自体決して涼しい風とは言えないのだが、無風のもわっとした日が続く中では何とも救われる思いがする。  この句から思い浮かべる情景といったらどんなものだろうか。夏休みでどこか海辺のリゾートに出かけ、ホテルかレストランの樹陰のテラスにくつろいでいるのだろうか。あるいは外出から戻ってシャワーで汗を流してさっぱりしたところで、苦味の利いたコーヒーを味わっているところか。  どちらでもいいだろう。眼目は「土用東風」と「深煎り珈琲」という一見無関係な二物の取り合わせが突然醸し出す気分である。(水)

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