点滴といふ名の鎖夏の月     大石 柏人

点滴といふ名の鎖夏の月     大石 柏人 『合評会から』(酔吟会) てる夫 点滴を「鎖(くさり)」と詠んだとこところに着目せざるを得ない。病室に月が射し込んでいるのか。点滴の苦役にさらされているような、冷たい感じが出ていています。 正裕 夏の入院ですよね。寝返りも身動きもままならない、鎖に繋がれたような感じなのでしょう。点滴を鎖と捉えたのがユニークだ。身動きのできない夏、というところですね。 春陽子 「鎖」は実感でしょう。この状況の対比として「夏の月」も効いている。 水馬 やはり「鎖」がいいですね。夏の月は暗くなく、病状に苦笑い、のペーソスを感じさせます。 而云 「点滴の鎖」には「命の繫がる鎖」という意味があるのかも知れない。 涸魚 作者は脳梗塞で入院したのですが、一週間ほどでよくなったそうですよ。              *        *  作者は左手に麻痺がある、と気づき、即座にタクシーで病院へ。早期発見、早期治療によってすぐに回復した。送って頂いた入院中の俳句の中に、この句はない。「句会に出そう」と決めておられたのだろう。(恂)

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