江戸川の空を裁つごと夏燕 岡本 崇
江戸川の空を裁つごと夏燕 岡本 崇
『合評会から』(三四郎句会)
敦子 燕が江戸川の上空を切り裂いていく。風景を大きく捉えた句だと思いました。
論 「燕返し」という言葉が浮かんできました。佐々木小次郎の見事な剣さばき。
有弘 やはり中七「空を裁つごと」の表現でしょう。これが効いています。
照芳 以前、たまたまこういうシーンを見たことがあり、どう言い表したらいいかと考えたことがあったので、この句はいいなと・・・。地球を真っ二つに、という感じを受けました。
進 今頃の季節に合っていますね。すっきりした句だと思いました。
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五月、巣立った雛たちは親燕に率いられ大きな川の河原に行く。葦や萱、雑木の茂みをねぐらとして、付近の空を縦横無尽に飛び交い、羽虫や蠅、蚊、ブヨ、蜂、口に飛び込んで来る虫を片端から呑み込む。この句はその動態を鮮やかに描いている。悠々と流れる大河、広い河原、その上に広がる真っ青な空を一気に切り裂くダンディな夏燕。実に気持がいい句ではないか。(水)