新茶汲みはらからの忌を修しけり     大澤水牛

新茶汲みはらからの忌を修しけり     大澤水牛 『この一句』  「はらから」は漢字で「同胞」と書き、「同じ母親から生まれた兄弟姉妹」のこと。この語の別の読み「同胞(どうほう)」が「同国民」「仲間」まで含むようになって、本家の「はらから」の意味も広がってきたという。この句の場合はもちろん、万葉の頃からの「はらから」、つまり「兄弟」である。  作者によると、兄上の一周忌に家族、親戚が集まった時の句であった。八十年近くも「兄」であり、ある時期からは「一族の長」でもあった人の一周忌である。孫、ひ孫を含む親族、縁者が集まっていたに違いない。法要の後だろうか、広間に集った人々が故人を偲び、新茶をしみじみと味わっているのだ。  「忌を修しけり」の語と「はらから」そして「新茶」が、句の奥底で響き合っている。「正統的な句だ」(正裕)、「折り目の正しい十七音だ」(てる夫)。合評会のこれらの言葉にうなずかざるを得ない。句会では、巧みな趣向や言葉遣いに注目が集まりがちだが、正統的な語の魅力も感じ取りたいものだ。(恂)

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