ニュータウン終の住みかや夏祭り     前島 巌水

ニュータウン終の住みかや夏祭り     前島 巌水 『この一句』  「是がまあつひの梄か雪五尺」(小林一茶)。この句から生まれた「終の梄(ついのすみか)」は、もはや一般用語と言えよう。雪が背丈ほども積もるのはうんざりだが、その雪の中で暮し、春を迎え、夏、秋を過ごし・・・。喜びも悲しみも、楽しさも辛さも故郷とともに、という思いが込められているのだろう。  ニュータウンもまた故郷である。かつては若々しいカップルが集い、近代的な生活を楽しんでいたが、人々は年を取り、子供たちは巣立って、高齢者たちの残るオードタウンになった。しかし元来が住みやすく設計され、都心への交通事情がよく、街路樹などの樹々も風格を見せている。  祭りの時期になれば、子供の一家がやってきて、孫が神輿を担いだりしている。もうここを動くつもりはない。空き家の増加、建て替えの噂が出るなど、問題がないわけではないが、愛着もまた深い。作者は祭りで久しぶりに賑わう我が街を眺め渡し、感慨を込めて「是がまあ」と呟いているのだ。(恂)

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