土手滑る子等若草の匂ひして 竹居 照芳
土手滑る子等若草の匂ひして 竹居 照芳
『この一句』
土手を勢いよく滑り降りて来る子どもたち。ズボンの尻やシャツに、若草の青い汁がついている。茶色の泥の染みもある。この染みはお母さんが洗濯してももう取れない。子どもたちはそんなことには頓着無く、キャアキャアと大騒ぎだ。
陽気がよくなって、子どもも大人も野外で思いきり羽を伸ばせるようになった。「滑ってきたのをお母さんかおじいさんが抱きかかえた、そんな感じを受けました」(而云)との感想があった。まさにそうした情景が浮かんで来る、明るくて楽しい句だ。
このブログ「みんなの俳句」を発信しているNPO法人双牛舎は毎年四月に総会を開き、会員からの投句をもとにした俳句大会を開催している。この句は4月23日に行われた第8回双牛舎俳句大会で「天」賞を射止めた作品である。
ところで、この句の場所は何処だろう。「土手」というのだから、大きな川の土手か、丘の上の住宅地のはずれにでもある土手か。とにかく、都内近県では今やこういう子どもの天国のような場所を捜すのが難しくなった。この句に一票投じた人たちは、自分たちの子ども時代を懐かしんで選び採ったのかも知れない。(水)