やり直しきかぬ人生春一番 片野 涸魚
やり直しきかぬ人生春一番 片野 涸魚
『合評会から』(酔吟会)
水馬 「やり直しの人生」と「春一番」をくっ付けたのには驚いた。物々しさと滑稽さが組み合わさって味を出している。
詠悟 人生のやり直し、これまで何回か考えた。もう一回ぐらいありえるかなとも考えるのだが。
操 私はまだ人生やり直せると思っている。春一番の風で元気出せよ頑張れと言っているような気がした。
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正確に勘定したわけではないが平均年齢七十歳を越していると思われる句会なのだが、「人生まだまだ」と元気溌剌である。作者は昔、キルケゴールの絶望の哲学を読んであれこれ考えたことを思い出して、この句が出て来たのだという。
「やり直しのきかない人生」というのはよく聞くフレーズだが、「春一番」との取り合わせがいい。やり直しはきかないにしても、強い春風に背中押されて、もう二つ三つ面白いことをやって、最終楽章を盛り上げようというのだ。(水)