ウォーキング歩幅広がり水温む 石黒 賢一
ウォーキング歩幅広がり水温む 石黒 賢一
『季のことば』
東京の気温が今年初めて二十度を越えた日、同年輩の句仲間三人と久々にゴルフに出かけた。一人が「背筋を伸ばさなくては」と言う。他の三人も「同感」である。私は春先、町に出た時、ショーウインドに映ったわが身を見て、ガックリきていた。「かくも老いたるか」と言いたいほどの姿なのだ。
その日以来、胸を張って歩きたいと思い、毎朝、大関・琴奨菊のように大きく反る運動をしていたのだが、少し歩いたりすると、また背中を丸めた自分に気づくのだ。ところが芝の芽生えだしたゴルフ場を歩き出すと、仲間はみんなシャンとしていたし、私もまずまずの姿勢を保っているらしい。
温度が上がると、姿勢がよくなるようである。グリーンを歩く歩幅も一歩が一ヤードと正確であった。最近の句会に出た上掲の句を思い出した。「歩幅が広がって水が温む」のはその通りなのだ。逆に水が温めば歩幅が広がるはず。人間も自然の中に暮している、ということを実感した一日であった。(恂)