国際線追越し龍は昇りゆく     高橋 ヲブラダ

国際線追越し龍は昇りゆく     高橋 ヲブラダ 『この一句』  日経俳句会3月例会には似た趣向で「登り来る龍に出遭ふや宇宙船 青水」という面白い句があった。どちらを採ろうかとずいぶん迷った末に掲載句を選んだ。ところが句会では宇宙船の方が断然人気だった。確かにアイデアという点では宇宙船との遭遇の方が断然奇抜斬新である。  どうして私は宇宙船を捨ててこちらを選んだのか。私自身のその時の脳味噌の動きをもう一度巻き戻してみた。実は最後まで惹かれていたのは、宇宙船の方であった。それなのに何故、それを落としたのか。思い出してみると、そのあまりにも斬新奇抜なところにちょっと引っ掛かる気がしたのであった。なんだかSF漫画を見ているような感じで、「つくり過ぎかな」と思ったのである。  国際線を追い越してゆく龍だって荒唐無稽なことでは同じで、やはりつくり過ぎである。しかし妙な言い方だがリアリティを感じたのである。ジェット旅客機が急角度に上昇、一面青空、真下に雲海という別世界に突き抜けた時の気分をまざまざと味わった。もちろん龍などは見えないのだけれど、あたかも龍と一緒に登って来たような感覚をこの句から感じ取ったのである。(水)

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