甘やかな春雨に濡れ君を待つ     斎山 弥生

甘やかな春雨に濡れ君を待つ     斎山 弥生 『この一句』  この句を見た時、「甘やかは一般用語なのかな」と思った。意味はもちろん分かるが、私は用いたことがない。広辞苑には出てない。しかし明鏡国語辞典にはあり、「いかにも甘い感じがするさま」だという。辞書にあったり、なかったりの辺りが、この語の立ち位置なのだろう。  細やか、鮮やか、軽やか、たおやか、きらびやか。「~やか」は、ごく普通に使われていて、探せば何十とあるに違いない。改めて句の「甘やか」を見つめる。上五に置かれているだけに、すぐ目に飛び込んできて、こちらの気持ちになじんできた。けっこういいかな、とも思う。  降るとも見えぬ春雨である。濡れているが、コートに水滴がつくほどではない。それに、なにしろ「君を待つ」だ。この句、甘やか過ぎるか、と思えてきた。ここからは好みの問題である。私なら砂糖を少々控え、苦みを利かせてみたい。「君」を「人」としたらどうだろうか。(恂)

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