小走りにつぐみ横切る二月かな     金田 青水

小走りにつぐみ横切る二月かな     金田 青水 『この一句』  掴み所の無い感じの二月を、可憐なツグミを取り上げて味わい深い句に仕立て上げた。作者は早朝散歩を日課としているようで、その賜物に違いない。  秋十月、日本海を越えて大挙飛来するツグミは日本中の里山で果実や虫などを食べて過ごす。山の木々が枯れ果て、木の実も虫も取れなくなってしまう真冬になると、平地に下りて畑や公園や神社仏閣などで餌を探す。そして、十分に体力のついた三月、仲間と大編隊を組んでシベリア目がけて飛び立ち、彼の地で繁殖活動に入る。  というわけでツグミにとって二月は極めて大事な時。一匹でも一粒でも多くの虫や草の実を拾わねばならぬ。しかし野鳥にとって餌探しで地上を歩く時が最も危険。ちょんちょんと歩いて虫を素早く捕まえて呑み込むと、立ち止まり、頭を上げて胸をそらし、攻撃者の接近を警戒し、同時に次の獲物を探す。この立ち止まってこちらを眺めるような恰好が傍目には実に可愛い。ハイカイ老人は「このツグミは愛想が良い、オレに挨拶して行ったよ」とご満悦である。(水)

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