しやぼん玉空へ二階のベランダへ 廣上 正市
しやぼん玉空へ二階のベランダへ 廣上 正市
『この一句』
一般家庭の庭を吹く風は、野原や運動場などの広い場所に比べると、かなり複雑な動きを見せる。家があり、垣根や庭木などがあり、隣家との狭いすき間もある。強い風、弱い風、あるいは無風の時もあり、上に吹きあげたり、時には吹き下ろしたりする。シャボン玉は面食らうのではないだろうか。
この句はまさに普通の家庭の光景である。幼い二人の兄妹が庭で競うようにしゃぼん玉を吹いている、と私は想像した。一つが順調に空に昇って行ったのだが、もう一つが同じように昇って行くとは限らない。初めは先行のしゃぼん玉を追いかけていると見せて、突然、真横に動き出したのである。
すると、お祖父さんが二階の部屋から顔を出した。俳句を作っていたのだが、孫たちのはしゃぐ声が聞こえてきたので、何をやっているのだろうと、ベランダに出てきたのだった。そこにしゃぼん玉が近づいていく。お祖父さんが手を伸ばす。子供たちは・・・。私はこんな状況を実際に見たことがある。(恂)