書き出しにはや二月という手紙来る     鈴木 好夫

書き出しにはや二月という手紙来る     鈴木 好夫 『季のことば』  二月半ばの句会で、この句に出会った時、「そうそう、こういう葉書を頂いたことがある」と共感を覚えた。やがて気付いた。「はや二月」。これは二月ではなく、一月のことを言っているのだ。新年を迎えたと思ったら、もう二月。つまり一月が瞬く間に終わってしまった、ということである。  一月はいろいろな行事が重なっていた。初詣や年始の訪問などの三が日に始まり、新年句会、初会合、初ゴルフ。私ごとで言えば、二日酔ものかわ原稿を書く時期もあって、三十一日間を意識することもなく過ごしていたような気がする。いま思えば、あの頃は早くも遠い過去になってしまった。  しかし「二月は逃げる」と言われる。時の過ぎていくスピードは一月より二月の方が早い、という実感もある。時の流れを速く感じるのは年のせいかとも思う。中学生時代に教わった漢詩の一節「一寸の光陰軽んずべからず」が耳に甦る。今日あたり、「はや三月」の葉書が来るかも知れない。(恂)

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