目刺焼く故郷の海は寂れけり 須藤 光迷
目刺焼く故郷の海は寂れけり 須藤 光迷
『合評会から』(番町喜楽会)
可升 こういう句、どっかにありそうな感じですが、私も同感します。
正裕 サンマ焼くよりは目刺が似合いますね。
双歩 目刺焼きながらしみじみと寂れゆく故郷を偲んでいる様子が浮かんできて、いいなと思いました。
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これは神奈川県の二宮海岸だそうである。この一帯は左隣の大磯から右隣の小田原まで、白砂青松の美しい海岸がずっと続いていた。ところが高度経済成長時代、国道一号線(東海道)の混雑緩和のために、大磯のはずれから小田原まで、海岸を真っ直ぐに突き抜ける西湘バイパスが出来た。これによって、二宮という半農半漁ののんびりした町は海と切り離されてしまった。
自動車でぶっ飛ばす人たちにとっては広々とした海と箱根に至る山を眺める、眺望絶佳のドライブウエーとして人気が高い。しかし、一晩中ひっきりなしに走る自動車のライトに怯えて、魚が寄りつかなくなってしまった。二宮の海は相変わらず美しいが、死んでしまった。これは痛恨のふる里挽歌である。(水)