春うらら新橋駅より豊洲駅 井上 啓一
春うらら新橋駅より豊洲駅 井上 啓一
『季のことば』
「麗らか」は、あたりが春の日に包まれ輝きを増している感じを言う。そこから人の心が伸び伸びとして、朗らかな感じになるのを表すのにも言うようになった。これと対になるような季語に「長閑(のどか)」があり、これも春の光りの明るさと温かさから出た言葉だが、今日では「のんびりした」「ゆったりした」気分を言うのに用いられている。
この句はそういう暖かでうららかな春の日に「ゆりかもめ」に乗って新橋から豊洲まで、お台場散策に出かけたところだろう。1853年(嘉永6年)ペリー提督率いる米国艦隊が突如東京湾に現れ、開国を迫った。これは大変だと幕府は「来年まで待ってね」と引き延ばし、その間に突貫工事で品川の八ツ山や御殿山を切り崩し、大砲を据えた台場を拵えた。以後、次々に八つも台場を造った。
それらを足場に沿岸部の埋め立てが進み、今では「ゆりかもめ」や「りんかい線」といった新交通システムも通って、東京新名所になった。子どもが好きなイベント会場や海浜公園がある。孫の喜ぶ様子を眺めては相好をくずす好々爺の姿も浮かんでくる。(水)