手描き絵の寒中伺ひまたうれし     大平 睦子

手描き絵の寒中伺ひまたうれし   大平 睦子 『季のことば』  「寒中見舞」「寒見舞」「寒中伺ひ」、いろいろな言い方があるが、寒さが最も厳しくなる一月六日頃から二月三日の節分に至るまでの「寒中」、親戚縁者や友人知己に「いかがお過ごしですか」と気遣いの便りを出すことを言う。喪中と知って年賀状を出すのを控えた人に対して、松が取れた頃に一筆啓上することも多い。もちろんその逆に年賀欠礼の詫びと共に寒見舞いを出すこともある。  インターネットのメールやラインなどが全盛の時代に、こうした郵便によるやり取りはいかにも悠長だが、あえて不便な手立てを講ずることによって、より一層の親密さを感じさせる。ましてやそれが手描きの絵ともなれば尚更だ。  これはまさに経験しなければ出来ない句で、「うれし」という直截な言葉が作者のはずんだ気持をよく伝えている。この句は酔吟会という高齢者の多い句会に投句されたものだが、これをきっかけに「私も絵手紙の寒中見舞もらって感激した」「台湾にいる孫がくれたんですよ、それが結構上手い絵で、嬉しかったなあ」と娘自慢や孫バカ談義の花が咲いた。それだけでももう十分の功徳を施した句である。(水)

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