申年や靴下紅く寒の入 谷川 水馬
申年や靴下紅く寒の入 谷川 水馬
『この一句』
「申年に赤い下着を身につけると縁起がいい」「健康を保てる」といった俗信がある。衣料品メーカーやデパートが昨年秋から暮れにかけてこれを盛んに囃し始め、歳暮贈答品や年賀用品に赤い下着を売り始めた。
下着メーカーのワコールも有力な仕掛人らしく、二十代から七十代までの女性1036人に「申年に赤い物を身につけると健康に過ごせるという言い伝えを知っていますか」というアンケート調査を行ったところ、「4人に1人が知っていた」とインターネットで触れ回った。こんなに沢山の人が知ってるんですよーと大宣伝なのだが、実はこれは四分の三、つまり大多数が「知らなかった」わけで、なんじゃらほいといった感じである。しかしまあ、そういうことに目くじら立てるのも野暮というものだろう。
とにかくこれは、「お猿のお尻は真っ赤っか」という俗謡や、「病が去る」といった語呂合わせが元になって、好事家が面白半分に真っ赤な猿股を贈ったり、はいたりしたのが始まりなのだ。大らかに笑って乗っかった方が健康にいい。作者も真紅の靴下をはいてきゃっきゃと喜んでいる。(水)