海賊の島より届く大蜜柑       大澤 水牛

海賊の島より届く大蜜柑         大澤 水牛 『この一句』  日経俳句会一月例会の最高点句。圧倒的と言えるほどの票を集めたのは、もちろん「海賊の島」によっている。瀬戸内海・大三島の大きな蜜柑を詠んだそうだが、「水軍の島の蜜柑」ではややパワーが落ちそうだ。俳句では時に一句を支配するような魅力ある言葉に出会う。この句が好例と言えるだろう。  合評会ではかなりの人が「瀬戸内海の大三島の蜜柑だろう」と話していた。これは「蜜柑の常識」と言えるようなことなのかも知れない。恥ずかしながら私は大三島が思い浮かばなかった。そのためか蜜柑の大きさや色などが具体的に見えず、「海賊の島」に魅力を覚えつつも、句は選ばずに終わった。  芭蕉は「東海道の一すじもしらぬ人、風雅におぼつかなし」と言っている。旅に出てさまざまな土地の風物を実見し、心に風雅を養え、ということだ。現在ならテレビ番組でたくさんの知識を仕入れることが出来るのだが、未だ風雅覚束なし。テレビをもう少ししっかり見なければ、などと考えている。(恂)

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