冬の日や足の爪切りひと仕事 堤 てる夫
冬の日や足の爪切りひと仕事 堤 てる夫
『季のことば』
「冬の日」という季語は、元来は冬の一日を指すものだが、冬の陽差し、冬の太陽を言うこともある。後者を言う場合は「冬日」としたり「冬の陽」とした方がまぎれが無くて良いのだが、しばしばごっちゃに詠まれる。
この句の「冬の日」はもちろん本来の意味での冬の日、それも日当たりの良い縁側か居間でくつろぐ午後の一刻であろう。新聞は読んでしまった。テレビはろくなものをやっていない。まとまった読書をするのはちょっと億劫だ。そんな気分ででもあろうか。
そうだ、足の爪を切ろう。この間から気になっていたのだが、年取って身体が硬くなってきたせいか、足の爪切りは結構苦労するもので、つい先延ばししてきた。爪切を持ち出してきて、新聞紙を広げ、やおら始める。うんうん唸って、ようやく十本の爪先をきれいにした。なんだか身体全体が軽くなったような気がする。(水)