姑に小さく切りし雑煮餅 星川 佳子
姑に小さく切りし雑煮餅 星川 佳子
『季のことば』
「雑煮」という言葉は「ごった煮」を思わせる。しかし、お雑煮は家によって作り方に違いはあるものの、一様にすこぶる美しく仕上げられる。なんでこんな妙な名前がついたのだろう。
大昔は「羹(かん)」と言った。羹とはスープあるいは汁の多い煮物のこと。冬至の夜や大晦日に神様に供えたものをあれこれ切り込んで汁物に作り、そこに餅も入れたのが発祥と言われる。とするとやはり「雑煮」なんだなと思う。
暮らしが洋風化した今も、正月の雑煮膳はいい。若い人たちも雑煮を食べお節料理を喜ぶ。姑さんともなれば尚更だ。この味付けもお姑さんに習って、この家代々のお雑煮を継承している。もっとも、自分も年取るにつれ、娘時代の実家のお雑煮がふと甦り、知らず知らず折衷雑煮になっている。
それにしても近ごろは、雑煮餅を喉に詰まらせて救急車の厄介になるお年寄りが目立つ。正月早々そんなことになっては大変。「あばあちゃま用はこれよ」と、あらかじめ小さく切っておいた餅を焼いている。ほのぼのとした情景が浮かんでくる句ではないか。(水)