年の瀬や豆腐ゆらりと鍋の海 大澤 水牛
年の瀬や豆腐ゆらりと鍋の海 大澤 水牛
『合評会から』(日経俳句会合同句会)
庄一郎 豊かな感じのする句です。「海」がいい。海がなかったら採らなかった。
好夫 湯豆腐が鍋の海の上で、蝶々が飛ぶようにゆらりとしている。私も「海」で採った。
昌魚 私も湯豆腐が大好きで、鍋の中の豆腐を眺めながら、猪口を口にちびりちびりとやっています。「ゆらり鍋の海」が何とも良い表現ですね。
水牛(作者) 私は鍋に昆布を敷いて、豆腐だけを入れるのが好きなんです。豆腐に熱が通り出し、ゆらりとする頃が一番うまい時です。
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仲間内の雑談から――。「彼が食べ物の話をすると、食べたくなるんだなぁ」。さほど話上手とは思えない男なのだが、こと食べ物になる実に美味そうに話をするのだ。俳句も同じであるらしい。美味しそうな俳句を作る人は、間違いなく美味いものが好きである。ところで私は美味いものより、食べやすい方がいい。湯豆腐で言えば、美味しい“絹”より、箸でつかみやすい“木綿”が好きなのだ。(恂)