泥ねぎをつるんつるんとつつがなし 廣上 正市
泥ねぎをつるんつるんとつつがなし 廣上 正市
『合評会から』(日経句会合同句会)
冷峰 「つるんつるんとつつがなし」という仮名の表現が生き生きとしている。泥つき葱の感じがよく分かる。
てる夫 「つ」の音を重ねた言葉の遊びのような使い方が面白い。「つつがなし」という言葉に一年間無事に過ごせたという気持ちが感じられます。
二堂 言葉のリズムが面白い。小さな幸せを表現しているのでしょう。
万歩 泥ねぎをつるんつるんと剥いているのか、あるいはつるんつるんと食べているのか。いずれにせよ「つるんつるん」から「つつがなし」へと続いていく語呂がいい。
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同じ句会に「年の尾や音立て踊る落し蓋」(玉田春陽子)という「お」の重なる句も出て、ともに高点を獲得した。双方、巧みなものだと思う。俳句に韻を踏む決まりはもともとないが、このように作られて見ると悪くない。しかし「音」を重ねることだけを目的にすると嫌味が出てきそうだ。調べをよくすることが先にあり、句を練り直しているうちに“出来てしまった”なら、大成功である。(恂)