目をそらす体重計や年の暮       谷川 水馬

目をそらす体重計や年の暮       谷川 水馬 『この一句』  この時期、忘年会をはじめ、何かと会合が多い。美味しいものを食べ、飲みたいだけ飲めば、当然、カロリーオーバーになる。すると体重が増え、ヘルスメーターに乗っても、数字は見たくないという、この句。ご本人の気持ちはよく分かるが、「うらやましい」と思う人がいることもお忘れなく。  七十歳を超える頃からだろうか。体重が増えない、減る一方だ、と悩む人々がいる。思い切ってトンカツを食べて見たら、胸やけでたまらない。食べまくって、体重が増えて行く人が羨ましい。俳句の会にも、このように体重増加組と減少組がいて、体重計の目盛りからさまざまな思いが生まれる。  この句はそんなわけがあってか、句会では一応の支持を得た。しかし作者の心を慮れば、会心の作ではないような気がする。自信作の方は無視された、ということがあったかも知れない。渾身の力作が人々の共感を呼ぶことは、むしろ少ない。さらりと作って最高の評価。それもまた俳句の頂点である。(恂)

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