歳暮とて野良に釣果の五六匹    金田 青水

歳暮とて野良に釣果の五六匹    金田 青水 『季のことば』  句の主人公は近くの防波堤か海岸に出掛けて、小アジやハゼなどの小魚を何匹か釣ったのだろう。大きめの魚が釣れたら刺身にでも、と皮算用を立てていたのだが、この日の釣果(ちょうか)は10造頬?燭覆い發里个り。さてどうするか、と思いながらの帰途、顔なじみの野良ネコに出会う。  おや、お前、腹が減っているようだな、と野良の顔を見つめれば「ミャー」と鳴く。ふと思いついた。魚は野良にプレゼントしよう。散歩に行く時にはついて来る。公園のベンチに腰を掛けていたら、いつの間にか足元に来ていたこともあった。お愛想のお礼に、いや、お歳暮ということにして・・・  夕べのひと時、新聞を読んでいたら「虚礼は廃止すべきか?」という記事が載っていた。上司にお歳暮を贈っている会社員がけっこう多いらしい。「そうなのか」と硬骨漢の彼は呟いた。現役の頃、上司に年賀状すら出さなかった。庭に来ていた野良に話しかける。「お歳暮なんて、お前にだけで十分だ」。(恂)

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