日に映えていろは紅葉の赤緑 宇野木 敦子
日に映えていろは紅葉の赤緑 宇野木 敦子
『季のことば』
先週、南禅寺で法事があって出かけた。紅葉が売り物の京都だが、いつもと比べてもうひとつ冴えない。「温暖化いうんでしょうか、過ごしやすいのはよろしおすが、紅葉にはあきまへんわなあ」と地元の人は言う。今年は、真っ赤にならずに茶色っぽくなって散ってしまう木が多いというのだ。
「もみじ」というのは、晩秋の冷気を受けて葉が黄色や赤に発色し散って行く落葉樹全般を指す言葉なのだが、ほとんどの人がカエデの葉の真っ赤に色づくのを思い浮かべる。千年も昔の平安時代に、楓の紅葉を「モミヂ」と言うようになっている。
春と秋が大好きな日本人は、秋の深まりを告げる楓紅葉を殊の外愛でた。数ある楓の中でも最も一般的なのが「イロハモミジ」である。至る所の山に自生し、神社仏閣はもとより大きな家の庭には必ずと言ってよいほど植えられた。
秋が進むにつれ緑の葉は黄色みを増し、紅を差しはじめ、やがて真紅に変わって行く。この句は目黒・東京都庭園美術館の、冬日射しを受けて輝くイロハモミジの美しさを素直に詠んでいる。「赤緑」と言ったところに、微妙な気候変化がうかがえる。(水)