天高し雲をかすめる観覧車 久保田 操
天高し雲をかすめる観覧車 久保田 操
『この一句』
列車や高速道路などから周辺を見渡して、「遊園地がある」と分かるのは観覧車が目に入るからである。日本では葛西臨海公園の百十七メートルが最も高いというが、もっと高いのが次々に建設されて行く予定だという。それだけ観覧車の人気が高く、遊園地のシンボルになっているからだろう。
観覧車に乗って眺めるのは、もちろん眼下の景色であり、上を見ることはあまりない。するとこの句の主人公は、地上から観覧車を見上げているのだろう。ご本人は高所恐怖症で、家族が次第に高く上っていくのを見守っているのかもしれない。あんな高くに、雲の間近なところまで・・・と。
秋晴れの日は、遠くから眺めても中の人が見える。お母さんと子供だな、などと思うこともある。それにしても「雲をかすめるとは」と思ったが、丘の上であれば十分ありうるだろう。祖母が下りてきた孫に「雲にぶつかりそうだったよ」と話していたかも知れない。なにしろ「天高し」の季節なのだ。(恂)