秋晴れに出番少なき背広乾す 印南 進
秋晴れに出番少なき背広乾す 印南 進
『合評会から』(三四郎句会)
賢一 最近、私も背広は着ないで吊るしっぱなしですが、これはカビでも生えていると困るから、涼しくなって点検しているのでしょう。秋晴れに相応しい句ですね。
有弘 あれもこれもと取り出して、天気がいいから乾かさなければ、という気持ちが伝わってきます。
照芳 同感。
崇 「秋晴れ」という大きな季語を自分に引きつけて詠んでいます。共感できる句ですね。
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定年退職後しばらくは第二の勤めだとか何やかやで、背広を着る機会がしばしばあるが、それも70歳の声を聞く頃までである。しかしそれを過ぎても、たまにはスーツ姿で行かねばならぬことがあるから、すべて処分するわけにもいかず、何着かは残してある。天高くからりとした日に、それらを干している。なんだか久しく合わなかった昔馴染みに出会ったような気分になる。(水)