一軒に秋の灯一つ老いし町   田中 白山

一軒に秋の灯一つ老いし町     田中 白山 『合評会から』(番町喜楽会) 双歩 一軒家が並んでいる町なんでしょう、その家ごとに一つずつしか灯りが見えないというんですね。表現がうまいなあと感心しました。 鬼一 世相をよく表しています。東京でもこういった町が出て来ているかも知れない。「老いし町」ですから住民も減って高齢化が進んでいるんでしょうね。 冷峰 奥多摩でこういう町を見ましてね、私だったら限界集落なんていう言葉をすぐに使っちゃうんだろうな、と。しかしこの句は「老いし町」と詠んでいる。なるほどなあと思いましたね。 大虫 きのう山口から帰って来たんですが、山口もこんな感じでした。一階に灯が点っている家、二階だけに灯が見える家、そういう風景ですね。 てる夫 私は田舎のかなり大きな農家を思い浮かべました。一部屋だけに灯が点っている。いかにも秋灯という感じがしまします。           *       *       *  あっさりと景色を写して現代を鮮やかに描き出している。秋灯の感じがしみじみ伝わってくる。(水)

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