爽やかに目礼かはす巫女と巫女   玉田春陽子

爽やかに目礼かはす巫女と巫女   玉田春陽子 『合評会から』(番町喜楽会) 可升 この句は何と言っても「巫女と巫女」でしょう。この言葉につかまっちゃいました。 而云 同感です。「巫女と巫女」の表現は新鮮で、今まで見たことがない。「目礼かはす」もいいですね。 水馬 爽やかな景が、すぐ見えて来ました。 佳子(メール選評) 面白い情景をスケッチされたなあと、感心いたしました。 瓢六(同) 神社の巫女さんになる資格は未婚の処女と決まっていましたが、今はどうでしょうか。それでも、品性のあるお嬢さんが選ばれているのでしょう。清々しい雰囲気が伝わってきます。 司会(光迷) 大きな神社なんでしょう。 作者 湯島天神です。              *             *  作者の「湯島天神です」に、「えーっ」という声が上がった。伊勢神宮、出雲大社のような立派な境内を頭に画いていたのだろう。しかしどこの神社であっても、爽やかな雰囲気の生まれる季節である。(恂)

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門柱に纏わる人形秋出水     大沢 反平

門柱に纏わる人形秋出水     大沢 反平 『この一句』  「纏わる」は「まとわる」「まつわる」両様の読みがあるが、どちらも同じ「巻きつく」「絡みつく」の意味である。秋出水によって、この家は床上浸水になったのだろう。侵入した水は家の中のものを外へ流したが、人形は家に未練があるようだ。何とか留まろうと門柱に絡みついて離れようとしない。  作者はおそらく、このような場面をテレビで見たのだろう。門柱に何かが絡みついていた。人形でも、動物のぬいぐるみでも、持ち主の気持ちを思えば、何とも切ない情景である。水害に遭ったすべて家々に家族の生活があった。たとえ家は残ったにしても、二度と元に戻らないものがたくさんある。  人形の持ち主は幼児だろう。自分の分身のように可愛がっていたのかも知れない。避難所で寝た一夜に、人形のことを思い出していたのだろうか・・・。この一句によって生じた思いは際限なく広がって行く。このたび大被害を受けた常総市周辺には、またも大雨の予報がある。天の神様、不公平ではないか。(恂)

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