芝の先一本ごとの露の玉   前島 厳水

芝の先一本ごとの露の玉   前島 厳水 『合評会から』(番町喜楽会) 冷峰 芝の一本一本に露の玉がついてるという、そんな細かいところまで良く見つめて描写している。その大切さをしみじみ教えてくれる句です。 大虫 実際にこの光景はよく見ます。自然というものは本当に平等なんだなあと思います。一つずつ隣り合ってびっしりついているんですよね。そんなところをうまく詠んでいます。 啓一 細かい観察により、新しい発見がある。           *       *       *  俳句を芸術に育てたいと切望し、病躯に鞭打って熱烈な筆を振るった正岡子規は、“月並俳句”から脱するための一手法として「写生」を唱えた。後事を託された高浜虚子がそれをさらに推し進めた。熱心な弟子の中には地面に円を描き、その中にあるものを一つ一つ句にするという修業までした人がいた。  そんなエピソードを思い出させる句である。冷え込んだ夜が明けて日が射して来た時、この世のものとも思われない幻想的な露の原が出現した様子を見事にうたい上げている。(水)

続きを読む