足元を見つめ直すや草むしり 和泉田 守
足元を見つめ直すや草むしり 和泉田 守
『季のことば』
「草取り」「草むしり」は夏の季語。これは主として田圃の草取りを指した伝統によるものである。昔のお百姓は大切な稲を健やかに育てるために徹底的に田草取りをした。五月に田植が済むと、十日もたたぬうちに雑草が生えて来る。それを抜くのが「一番草」。七月、そろそろ穂が出ようかという頃合いになると、雑草も盛んに伸びる。これを取るのがコメの出来具合を左右する重要な「二番草」。そして七月末から八月にかけてもう一回やるのが「三番草」。
しかし今や除草剤のおかげで田草取りの苦役は大幅に軽減された。だから近ごろの草取りは、庭や道路や公園、あるいは健康を慮って除草剤を使わない畑や家庭菜園での風景になっている。
草むしりというものは、やり出すとついついむきになってしまう。全部取り尽くすことは不可能で、小さな芽や根は残ってしまうのだが、それをも取ろうとする。前方、左右に視線を走らせ、抜き取る。そして一歩足を動かすと、何たること、足元に二三本残っていた。「足元を見つめ直す」という措辞が、期せずして人生訓に通じて面白い。(水)