天の川我らの星も流れ行く 高橋ヲブラダ
天の川我らの星も流れ行く 高橋ヲブラダ
『この一句』
地球を「我らが星」と言ったところが面白い。まるで宇宙船から眺めてでもいるようだ。地球は銀河系の隅っこにある太陽系の、そのまた小さな惑星の一つで、日々刻々流れている星だという。これはまさに現代の俳句である。江戸時代はもちろんのこと、明治、大正、昭和の俳人に、天の川を仰いでこうした考え方をする人は無かったと思う。
最近の宇宙開発の目覚ましい進歩発展により、関連ニュースが新聞やテレビで華々しく報道されるにつけ、私たちは自然に宇宙に目を向けるようになった。それもただ名月を眺め、天の川を振り仰いでロマンチックな幻想に浸るだけでなく、宇宙飛行のこととか、衛星からの地球観測など、現実的な意識が深まった。この句はそうした時代背景から生まれ出た句である。
我らの星も流れ行く──そしてもちろん、その上で右往左往している「我ら」は日々流されっぱなしである。そんな意味合いも汲み取れて、実に面白く、素晴らしい句である。(水)