弥勒仏思惟の指先秋の声    深瀬 久敬

弥勒仏思惟の指先秋の声    深瀬 久敬 『この一句』  日本の弥勒仏ほど美を極めた仏像は他にないと思う。「半跏思惟」と呼ばれるその姿のよさ。台に坐し、右足はひざを曲げて左足の上に置き、体をやや前に倒し、右手は曲げて右膝の上に・・・。皆様、とっくにご存じのスタイルだから、説明など不要だったか。とにかく眺めていて茫然とするほどの美しさだ。  わけても特徴的なのが右手の指先である。京都・広隆寺の「宝冠弥勒」は親指と薬指の先を付け、他の三本は軽く曲げている。また奈良・中宮寺の弥勒様は中指一本を頬に当てている。作者はその「思惟の指先」から、「秋の声」が聞こえてくるという。これも一つの美の極み、と言えるだろう。  「秋の声」という季語は天明期(十八世紀後期)、与謝蕪村、高桑闌更らの作によって一般化して行ったという。風の音などから発想されたと思われるが、時を経て無風・静寂の中かからも秋の声が聞こえてくるようなった。俳句を詠むことによって、人の感覚が研ぎ澄まされてきたように思われる。(恂)

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