家出ネコ探す声する処暑の宵   鈴木 好夫

家出ネコ探す声する処暑の宵   鈴木 好夫 『この一句』  猫は犬よりは暑さに強いようだが、それでも今年の夏はぐったりげんなりしているのが多かった。処暑の候、ようやく朝晩涼しい風が吹いて来ると、途端に元気になる。なにはともあれ縄張り点検に出かける。時には胡散臭い野良が這い込んでいたりしており、追いかけているうちに帰るべき道順が解らなくなってしまう。都会の家猫の行動範囲は意外に狭く、半径五十メートルも出歩くのは活動家の猫だという。普段家の中だけで飼われている猫は、わずか三十メートルくらいしか離れていなくても、二三回路地を回ると迷子になってしまう。  これもそういう内弁慶の猫なのだろう。飼い主は必死になって呼びながら近所を回る。端からはちょっぴり滑稽な感じもするのだが、飼い主は真剣だ。翌朝になっても帰って来ないと、写真をくっつけたビラを何枚もプリントして掲示板や電柱に貼ったりしている。  処暑の宵の口の町場の情景を切り取った佳句。しかし、わざわざ「ネコ」と片仮名で書かずとも良かったのではないか。外来語でもないのに片仮名で書くと、何か特別な意味があるのかと余計な勘ぐりを招いてしまう。(水)

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