朝露に棘やわらかく紅の花     久保田 操

朝露に棘やわらかく紅の花     久保田 操 『季のことば』  合評会でこんなコメントがあった。「昼間は棘が硬くて痛いから摘めない。だから朝露の時に・・・。山形に行くとこういう光景がありますよ」(光迷)。「ああ、そうか」「そういうことなのか」と何人かが反応した。私もその一人だったが、花は摘まずに触っただけというのも悪くない、と思った。  紅花の本場・山形県にいけば、「露が降りている時は、刺は痛くない」という説明を聞いたりするのだろう。そこで作者は早起きして紅花畑へ行き、そっと触ってみて「アラ、本当に痛くない」とニッコリ、という場面を想像した。昼間、触って「やっぱり痛い」と言うのでは普通の観光客である。  七月の句会に出された句で、その時は「紅花」(夏)が季語だと思っていた。今ならもう「露」(秋)が相応しくなっている。この句はつまり「季重なり」なのだが、紅花と露のどちらも必要なのだ。紅花は紅の染料になるだけではない。種から紅花油も採るので、花は秋まで咲いているという。(恂)

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