卓袱台を庭に運びて梅干せり   池村 実千代

卓袱台を庭に運びて梅干せり   池村 実千代 『この一句』  立秋までの十八日間が夏の土用で、暑さが極まる時とされる。ちょうど土用の入りの頃、本州一帯の梅雨が明け、灼熱の太陽が照りつける。この時期に、先祖伝来の掛軸をはじめとした書画骨董、蔵書を日に当てて湿気と紙魚を払う「虫干し」が行われる。それと平行して梅雨入りのころに漬けた梅を干す。  今どき東京あたりで梅干を作る家庭は無いだろうと思っていたのだが、六月に都心のデパ地下で青梅を売っていた。細々と梅干作りをする家が残っているらしい。漬けたとなれば、土用干しは欠かせない。塩蔵した梅を土用干しすると、皮が柔らかくなり実が締まって、初めてちゃんとした梅干になるのだ。  しかし、この句は今どきの梅干作りではなく、梅干作りを盛んにやった昔を懐かしんでいる句であろう。漬けた梅を並べた笊や簾を載せる台が足りなくなって、ついに茶の間の卓袱台を運び出したというのである。こうした梅仕事は大概はオバアチャンの采配で、お母さん、娘、息子が動員されて賑やかに行われる。大わらわの土用干しの情景が生き生きと描かれている。(水)

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