機首下げて街にあまねく西日かな   直井  正

機首下げて街にあまねく西日かな   直井  正 『この一句』  日本の空港は概ね住宅密集地の近くにあるので、騒音規制などによって、かなりの高空を飛んで来て、空港近くになるとぐるぐる旋回しながら高度を急速に落とす。羽田空港などはその典型である。戦後70年もたっているのに、首都周辺の航空管制の主導権は未だに米軍に握られている。民間飛行機は狭い空域を遠慮しながら、まるで螺旋階段を降りるような恰好で降りて来る。  晩夏の午後五時頃、羽田に降りようとする飛行機の窓からは、真っ赤な太陽が、首都圏の市街地を照らして千変万化の景色を描くのが見える。京浜地域と房総半島の半ばくらいまで、住宅や工場が透き間なく並び、壊れかけた万華鏡のような支離滅裂な模様になっている。  「街にあまねく西日」というのが面白い。古俳諧から現代俳句まで、西日の句は暑苦しい感じをうたい、視線は水平線かやや上方に上げたくらいの眺めを詠んだものがほとんどなのだが、なんとこれは上空から見下ろしている。まさに大鷲になったような気分の句である。(水)

続きを読む