青空の深さこよなき長崎忌   今泉 而雲

青空の深さこよなき長崎忌   今泉 而雲 『季のことば』  長崎に原爆が落とされたのは七十年前の今日8月9日であった。その三日前の6日には広島に落とされている。爆撃直後から、その後の放射線障害いわゆる原爆症による死者を含めて、両市の原爆犠牲者は三十万人に上る。これほど残虐非道な武器が使用されたのは歴史始まって以来、この二つだけである。この事実を風化させてはならない。悲惨なことや醜悪なる現実から目を背けがちな俳人も、「原爆忌」と「敗戦忌(終戦日)」だけは詠み続けた方がいい。  ところが困ったことに、季語の季節区分が広島忌と長崎忌で異なってしまうことである。広島忌は「夏」だが、立秋をまたいでしまう長崎忌は「秋」になる。敗戦忌は8月15日だから無論、暦の上では秋。しかし、この三つとも気分的にはこの上なく暑苦しく、「夏真っ盛り」という感じである。この三つだけは歳時記を無視して「夏」の句と見なすのはいかがか。  永井隆博士の随筆「長崎の鐘」を元にサトウハチローが作詞して大ヒットした同名の歌、「こよなく晴れた青空を悲しと思うせつなさよ」、この句はそれを本歌取りした句だが、実に上手く長崎忌の雰囲気を詠んだ。(水)

続きを読む