希望残せしパンドラの箱原爆忌     前島 厳水

希望残せしパンドラの箱原爆忌     前島 厳水 『この一句』  「パンドラの箱」とはギリシャ神話にある災いの詰まった箱のこと。ゼウスがあらゆる悪を閉じ込めていたが、パンドラという女性が好奇心で開けてしまった。箱から人の世に災いをもたらすものが次々に飛び出して行く。パンドラが慌てて蓋を閉めたら、最後の一つ「希望」だけが箱の中に残ったという。  この句は、以上の話を知らないと理解しにくいが、言いたいことの全てを五七五の中に収めるのは不可能に近い。「パンドラの箱」「希望」そして「原爆忌」それに「(希望だけがが)残った」も必要なようである。さてどうするか。作者は結局、満足のいかぬまま句会に出したのではないだろうか。  俳句ではしばしば知識を試されるが、この句の場合、「希望」のことまで知る人は少なかったようだ。しかし句会に出す意味は大いにあった。「パンドラの箱」は原爆投下を考える上で実に適切な寓話だからである。どう作ればこれらの材料が一句にうまく収まるか。もう考え始めた人がいるかも知れない。(恂)

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