お隣の南瓜たくまし垣根越し   堤 てる夫

お隣の南瓜たくまし垣根越し   堤 てる夫 『季のことば』  南瓜の苗や花は「夏」の季語なのだが、単に南瓜と言うと実のことになり「秋」になってしまう。胡瓜も西瓜も白瓜も冬瓜(とうがん)も、瓜類はほとんど全て苗と花が夏で、実は秋のものとされている。しかし、今やこれらは夏も秋も関係無く、ほとんど一年中手に入る。  食べ物に季節感が薄れて久しい。高度経済成長期に蔬菜作りの技術、施設、品種改良、そして貯蔵技術が飛躍的に進歩し、本来の生り時以外にも出回るようになった。食生活が豊かになったのは有難いが、食べ物や着る物によって季節の移り変わりをしみじみ感じるという楽しみが奪われてしまった。  そうした中で南瓜だけは今でも秋になってから出て来るようだ。こういう庶民的な野菜を温室栽培して早出ししてもそれほど有り難がられないからだろう。  この南瓜という植物実に元気旺盛で、四方八方にぐんぐん伸びる。垣根越えなどめずらしくもない。町中の狭小住宅であればたちまち喧嘩になる。しかし作者の家の庭はゆったりしているから「お隣の南瓜たくまし」と笑顔でいられる。やがて秋になればお隣から大きなやつが届くのではないか。(水)

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