当選す西日差し込む2DK     杉山 智宥

当選す西日差し込む2DK     杉山 智宥 『この一句』  2DKにも「億ション」があると聞いたが、これはこじんまりしタイプだろう。「当選」したのだから、たぶん公営住宅である。昔のことのようにも思えるが、現在のことでもいい。ともかく当選して大喜び。現物を見たら西日が射しこんでいたが、まあ、よしとしよう、と句の主人公は思ったのだ。  「境涯俳句」という語が流行っていた頃があった。石田波郷は当時、「俳句は私小説だ」と語っている。自分の置かれた状況を切々と詠むのが俳句の本質、という考えである。半世紀も前のことなのだが、やがて私小説傾向が俳句の主流になり、現代に続く。この句もまた境涯俳句と言えないこともない。  ところで作者は“現代仮名遣い派”である。「旧仮名を知らないから」などと言っているが、「現代を詠むなら、現代仮名遣いを」と考えているらしい。この句、「2DK」に企みがあるのかも知れない。古い言葉遣いを守る人々に「これをどう表記するのか」と問うたのか・・・。そんな気もしてきた。(恂)

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