柿わかば朝日通さぬ切通し       加藤 明男

柿わかば朝日通さぬ切通し       加藤 明男 『季のことば』  樫、椎、樟(くす)など、いろいろな若葉があるが、柿若葉ほど人々に親しまれてきたものはない。山村だけでなく、かつては都会でも家があれば柿の木がつきもので、初夏になれば柿若葉が庭を覆っていた。柿若葉の句は無数と言えるほど。その中から近年の作を少しばかり調べて、一つの傾向を見つけた。  ほとんどの句が「取り合わせ」なのだ。柿若葉を直接詠むのではなく、家族、友だち、人生、恋、祖父母の死などなど、人間絡みのことが一方にある。そこに「柿若葉」が付くと、句になってしまう。柿若葉そのもののことは種切れらしい、と思っていたからだろうか。この句がとても新鮮に見えてきた。  柿の葉は大きく、厚みもある。それらが重なり合い、この時期になると木漏れ日ひとつ許さないほどだ。作者は朝の散歩に出たのだろうか。切通しの上に柿若葉が覆い被さっていて、日差しが全く遮られていたのである。木下闇のトンネルを抜け出た時の、朝日の眩しさまで感じることができた。(恂)

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