端居して愚に返ること思ひけり     岩沢 克恵

端居して愚に返ること思ひけり     岩沢 克恵 『この一句』  部屋の隅などに端居(はしい=夏の季語)して、「愚に返る」ことを思っているのだという。句会でこの句を見た時、「こざかしい行動や考えはやめて、愚直に生きよう」と思ったのだろう、と解釈していた。我が家に帰ってから「待てよ、誤解していたかな」と気づき、辞書で調べて、思い違いを知らされた。  正しい意味は「年をとって愚かになる」ことなのだ。「何だ、今のオレのことか」と心の中でつぶやいた。このところ物忘れが多い。先日も約束を忘れたばかりか、もう一つ勘違いを重ねて、ある人にたいへん迷惑をかけてしまった。気づいてお詫びのメールを入れたら、「なんのなんの」という返信がきた。  「愚に返る」ことは高齢者に共通する恐れであるはずだ。作者は少し早過ぎるような気がするが、同じ思いを抱き始めたのかも知れない。前述の返信メールはこのように続いていた。「私もしょっちゅうです。気にすることはありません」。当方の気分は俄にからりと晴れ上がった。「なんのなんの」である。(恂)

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