藍染の帽子がサイン兄の夏       金田 青水

藍染の帽子がサイン兄の夏       金田 青水 『季のことば』  兄の夏、である。雰囲気からすれば、妹の立場による句のように思えるが、弟なのかも知れない。母親が「お兄ちゃん」のことを詠んだ、という感じもある。「藍染の帽子」は野球帽、麦わら帽、手製の帽子などなどが考えられよう。状況のはっきりしないのが残念、ということで、選ぶのを見送ってしまった。  句会は梅雨入り前のことで、早くも真夏のような日が到来していた。それから重苦しいねずみ色の雲が空を覆う日が続いて、梅雨の季節の始まりである。すると不思議なことに藍染の帽子の句が頭に浮かぶようになった。遠いところにポツンと、小さな帽子が見えるような気がするのである。  俳句をやる者にとって夏は五月初めの立夏から始まる。五月、鯉幟、若葉、薫風。みんな夏の季語だ。それらの後に梅雨雲の向こうにある「青空の夏」を思うようになる。七夕、夏休み、水泳、炎天。少年の被る帽子の色は、曲折的な初夏の後に控える本当の夏の象徴かも知れない。梅雨明けが待たれる。(恂)

続きを読む